学生を急成長させた「いまだかつてない就活のカタチ」僕ラボ誕生の背景にあるもの

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以前のことだが、都内の某大学で、ある講義の設計・運営をした経験がある。
いわゆるMARCHクラスといわれる大学だ。

依頼が舞い込んできたのが冬、年が明けた頃で、次の春からの授業、いわゆる前期の講義全14回分を担当してもらえないか、ということだ。

大学での講義依頼というものがこんなに急に来るものとは当然思ってもおらず、担当するクラスは4つ、しかも学部もバラバラの1年生が対象、ということで、初めは断ろうかと思っていた。
大学の担当者からの説明では、『リーダーシップ』に関する講義をして欲しいとのことだった。そのテーマであれば、内容・手法などはまったく自由にしてくれていい、ということだった。
いい意味では、こちらの自由にできる、悪く言えば、≪丸投げ≫である。やはり、断ろうかと思っていた。

しかし、よくよく考えてみた。

これまでの仕事で、さまざまな就活や採用活動に携わり、多くの学生たちとの接点を持つことができた。それら経験のひとつの節目として、小さな総括として、またささやかながら、ひとつの恩返しとしても、リーダーシップに絡めた形で、『仕事・職業・キャリア』について講義を行うのは非常に意義あることではないかと。

講義をする相手は、受験もやっと終わり一安心、高校卒業後間もない大学1年生。
就職うんぬんはまだまだ先の話で、まずは、バイトだ、サークルだ、キャンパスライフをどうしようかワクワクしている学生たちにあえて≪就職活動≫に考えてもらうのは、大いにアリではないかと。

そんなわけで2月も終盤に差し掛かったところで、是非やりましょう、とお返事をやっと。
そこから授業の組み立てを始め、なんとか4月アタマ、新学期の開始までに一通りの設計が完了した。
(私がOKしなければどうするつもりだったのか、今思うと不思議である。返事を2月末待っていてくれるとは、その担当者もなかなか肝が据わっている……)

ということで、出来た講義のタイトルは、

「いまだかつてない就活のカタチを提案する」

こんなタイトルで学生が集まるんかいな、と無責任にも思っていたところ、朗報が。
定員80名枠に対して、応募が200名を越え、受講者を書類選考しなければならない、という盛況ぶり。

リーダーシップに関するレポートを受講希望者たちに提出してもらったが、非常にレベルの高い内容のものばかりで、選考には非常に苦労をした。

そんなこんなで、4月から4クラス、80名(20名/クラス)で講義が無事スタート。

カリキュラムの内容はこのようなもの。

 セッション1  アイスブレーキング
 セッション2  キックオフ
 セッション3・4  現状分析
 セッション5  振り返り
 セッション6・7  ソリューション検討
 セッション8  中間フィードバック
 セッション9・10  ソリューション検討
 セッション11  予選
 特別セッション  決勝
 セッション12  大学生活デザイン
セッション13・14  リーダーシップ振り返り

 

学生たちが少人数のグループワークを通じて、課題解決に向けた企画提案を行うプロジェクト型講義。

『チームとしての成果』をあげるためのリーダーシップの必要性を体感し、そして学生一人一人が自身のリーダーシップの発揮方法に気づくことを目指し、

① 企業の現場で行われている、ワークショップ・KJ法での課題分析・プレゼンテーションなどの手法により、組織で必要とされる、視野の広い考え方とチームで成果を出すリーダーシップスキルを持つ人材の育成

② 大学生活の中でも一大イベントといえる「シュウカツ」の実態を1年生という早い時期に把握・分析することで、出口のイメージから逆算した大学生活を豊かにデザインする

ことができるように組み立てたものだ。

就職活動の解禁時期変更や、就職活動に対する社会的課題を否応なく意識しながら、学ぶ学生たち自らが、置かれた環境を分析し代替案を提案できるように、

・新しさ―「こんなの聞いたことない」と思えるかどうか
・納得感―「なるほど、確かにそうだ」と思えるかどうか

の2点で評価をする全く新しいカリキュラムとした。

更にフィールドワークとして、海外との就活事情の比較、就活中の3・4年生へのインタビュー、就活ツールや手法などの実態調査を毎週課題として実施してもらった。

そして講義終盤の目玉は、クラスごと5名ずつ、4チームに分かれての全16チーム対抗の≪企画・プレゼン大会≫だ。

予選はクラスの中から1チームが勝ち進み、4チームまで絞られた決勝では、クラスを飛び出して、大講堂での≪大プレゼン大会!≫

審査員には企業の人事担当者を呼んでの真剣勝負。
そしてなんと学長までもが審査に加わるサプライズ! 私も驚きました、これには。

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おそらくこういった形での講義は初めてだろうし、とそもそも「就活」や「はたらく」ことのイメージを掴めないでいる大学1年生たち。
4月、講義が始まったばかりの彼らの戸惑った顔は今でも覚えている。

しかし、毎週のリサーチ・課題の提出・ワークショップ・プレゼンテーション、と繰り返す中で、彼らのスキルや意識、といったものは目を見張るスピードで向上していった。

更に学生たちにとって大切だったのは、3年生・4年生になると、自分たちにどのような選択が迫られるのか、それを踏まえた上で、「就活」は実は非常に様々な選択肢がある、ということを理解できたということだ。

1年生のうちから就活をすること自体が重要なのでも、有利になるようなことでもなく、ある一定の時期が来たら「はい、スタート」と始め(させられ)る、現在の就職活動のルール・レールに捉われることなく、仕事選びには多くの選択・手法・可能性があり、それらを使いこなしていくための情報と知恵、を早くに発見できたことである。

学生生活とその後の生活をシームレスに考え、現在の過ごし方を主体的に選択していくことが、彼らがこの授業を受けて獲得した一番のものではないかと考える。

浜松町に今回オープンした「僕ラボ / 僕らのワークデザインラボ」はそのような機会・体験を多くの学生に体験してもらいたいと思ってプロデュースしている。

是非、一度足を運んでいただけたら幸いである。